東京為替見通し=ドル円、米債務上限リスクが上値を抑える展開か

 5日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米4月非農業部門雇用者数が前月比25.3万人増、失業率が3.4%だったことで135.12円まで上昇した。ユーロドルは米4月雇用統計を受けたドル買いで一時1.0967ドルまで下落後、欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続観測を背景にしたユーロ買いで1.1036ドル付近まで反発した。ユーロ円はダウ平均が一時620ドル超上昇したことで、148.71円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、好調な米4月雇用統計にも関わらず135円台が重かったことで、6月1日が「Xデイ」とされる米国の債務上限引き上げ問題や米金融システムへの警戒感が上値を抑える展開が予想される。

 ドル円の上値抵抗線は、日足一目均衡表・転換線の135.40円、下値支持線は、雲の上限の133.00円となっており、今週はこのレンジからの放れに就くスタンスで臨むことになる。

 米国4月の失業率は3.4%へ低下し、非農業部門雇用者数も前月比25.3万人の増加だったにも関わらず、米10年債利回りは3.43%台で引けており、ドルの上値を抑えている。
 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、6月と7月FOMCでは政策金利据え置きの確率が高いものの、9月FOMCでは0.25%の利下げ確率が高まり、12月FOMCでは、FF金利誘導目標が4.25-50%へ引き下げられる確率が高まっており、ドット・プロット(金利予測分布図)での5.00-25%とは0.75%の乖離となっている。

 イエレン米財務長官は1日、財務省が連邦債務を上限未満に維持するための特別会計措置を6月1日にも使い切る可能性があると議員らに伝えた。6月1日の「Xデイ」に向けて、バイデン民主党政権と議会共和党との間で「チキンゲーム」が繰り広げれることになるが、明日9日にバイデン米大統領とマッカーシー下院議長ら議会指導部と協議する予定になっている。バイデン米大統領は5月19、20、21日には、広島サミットに参加するため、バイデン米大統領、上下両院の議員がワシントンに居る時期は7日間(5月:9日、10日、11日、12日、15日、16日、17日)だけとなっている。

 2011年夏のオバマ第44代米大統領と下院共和党による債務上限を巡るチキンゲームは、8月2日の期限に対して、7月31日に米議会は債務上限引き上げを承認したことで、米国のデフォルト(債務不履行)は回避された。しかし、8月5日に格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が、財政赤字削減計画が米国の債務の安定化には不十分との見方から、米国の長期発行体格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げたことで、米国債格下げショックが市場を襲った。
・ダウ平均株価:前日比634.76ドル安の10809.85ドルへ下落
・日経平均株価:9500円台から9000円割れへ下落
・ドル円相場:79円台から76円台へ下落

 今回も、欧州の格付け会社スコープ・レーティングスが、債務上限制度の乱用に関連する長期的なリスクを理由に、「AA」としている米国の現地通貨・外貨建て長期発行体の格付けを格下げ方向で見直すと発表している。
 バイデン米大統領は、連邦政府が支払いを継続できるよう憲法修正第14条を発動して危機を回避する選択肢があるとも指摘されており、関連ヘッドラインに警戒せざるを得ない日々が続くことになる。



(山下)
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