東京為替見通し=ドル円、来週へ延期された債務上限協議への警戒感から伸び悩む展開か

 11日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、4月米卸売物価指数(PPI)や前週分の米新規失業保険申請件数が予想よりも弱い内容だったことで133.75円まで下落後、134.59円付近まで反発した。ユーロドルは米債務上限問題を巡る懸念や米金融システム不安再燃への警戒から、ダウ平均が一時400ドル超下落したことでリスク・オフのドル買いが優勢となり1.0900ドルまで下落した。ユーロ円はユーロドルの下落につれた売りで146.13円まで下落後、ドル円の反発につれた買いで146.93円付近まで反発した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、本日予定されていた米国債務上限引き上げを巡る協議が来週へ延期されたことで上値が重い展開か予想される。

 イエレン米財務長官が、米国がデフォルト(債務不履行)に陥る「Xデイ」と警告した6月1日が近づく中で、バイデン米大統領とマッカーシー下院議長(共和党)などの議会指導部による債務上限引き上げの協議は、9日に続いて本日予定されていたが、来週へ延期されると報じられている。当局者によれば、この延期は、債務上限突破を回避するための合意に向けたスタッフレベルの交渉が進展していることによるものらしい。バイデン米大統領は、来週早々に議会指導者と会談した後、19、20、21日には広島サミットに参加することになっている。バイデン米大統領と上下両院の議員がワシントンに同時に居る時期は、「Xデイ」までは4日間(12日、15日、16日、17日)だけとなっている。

 2011年夏のオバマ第44代米大統領と下院共和党による債務上限引き上げを巡る「チキンゲーム」の時は、1兆ドルのプラチナコイン発行案、合衆国憲法修正第14条の発動案が検討されたが、オバマ米大統領は一蹴しており、8月2日の期限直前の7月31日に米議会が債務上限引き上げを承認したことで、米国のデフォルトは回避された。しかし、8月5日には、格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が、米国の長期発行体格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げたことで、米国債格下げショックが市場を襲った。
 今回は、バイデン米大統領が合衆国憲法修正第14条の発動に言及しているが、イエレン米財務長官は否定的な見解を示している。

 今年1月、マッカーシー下院議員が下院議長に就任するまでに15回の投票を要したが、マッカーシー下院議長は、反対し続けた下院共和党の保守強硬派「フリーダム・コーカス」に対して、ホワイトハウスに大規模な歳出削減を認めさせることを約束した。4月25日に米下院で可決したマッカーシー下院議長案は、債務上限1.5兆ドルの引き上げと10年間で4.5兆ドルの福祉・エネルギー関係予算を削減する法案だった。共和党のマコネル上院院内総務を含む同党の上院議員43人は、無条件で連邦債務上限を引き上げる法案の採決を認めることに反対すると表明し、「実質的な歳出・予算の改革」が法案に盛り込まねばならないと主張している。



(山下)
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