東京為替見通し=ドル円、米国の債務上限引き上げ協議を控えて上値が重い展開か

 8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが3.51%台まで上昇したことなどを手掛かりに135.23円付近まで値を上げたものの、米債務上限問題を巡る懸念からダウ平均が一時160ドル超下落したことで134.66円付近まで下押しした。ただし、米長期金利が再び上昇したことで、135円台まで持ち直した。ユーロドルは米長期金利の上昇を受けて1.1000ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜予定されている米国債務上限引き上げを巡る協議とロシアの「戦勝記念日」への警戒感から上値が重い展開が予想される。

 ドル円の昨日の高値は135.30円までで、日足一目均衡表・転換線の135.40円が抵抗帯として上値を抑えた。本日も、135.51円へ上昇している転換線を攻防の分岐点として注視していくことになる。

 米国のリセッション(景気後退)を誘発する信用収縮への警戒感が高まる中、昨日は、3日のFOMC後の記者会見でパウエルFRB議長が公表を予告していた融資担当者調査(SLOOS)が発表された。1-3月(第1四半期)に中・大規模企業向け融資の条件を引き締めている米銀行の割合は、2022年10-12月(第4四半期)の44.8%から46%に上昇していた。融資基準を引き締めた銀行の割合の増加は、経済活動の鈍化につながり、景気後退の前兆になる可能性があるが、過去のリセッションの時は60%程度となっていたことで、昨日の市場への影響は限定的だった。

 イエレン米財務長官が6月1日を「Xデイ」と警告した債務上限引き上げ問題は、本日、バイデン米大統領がマッカーシー下院議長(共和)ら議会指導部と協議する予定になっている。そして、明日10日にバイデン大統領がデフォルト(債務不履行)について発言する予定、と報じられている。バイデン大統領は5月19、20、21日には、広島サミットに参加するため、バイデン大統領、上下両院の議員がワシントンに同時に居る時期は7日間(5月:9日、10日、11日、12日、15日、16日、17日)だけとなっている。

 バイデン大統領の切り札は、連邦政府が支払いを継続できるよう憲法修正第14条を発動する選択肢があるとも指摘されている。
 一方、マッカーシー下院議長は、ホワイトハウスと議会民主党が実質的な歳出削減で譲歩することなどと引き換えに、1年間の適用停止を提案するのではないか、と報じられており、今後も関連ヘッドラインに注目しておきたい。

 また本日9日は、ロシアの「戦勝記念日」となっており、先日、ロシアの下院議長が、ウクライナ政権中枢に向けた戦術核の使用を促す極論を提案しており、戦勝記念日に乗じて戦局打開策が打ち出される可能性に警戒しておきたい。


(山下)
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