東京為替見通し=ドル円、本邦通貨当局の円買い介入の可能性に要警戒か

 21日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、6月米製造業・サービス部門購買担当者景気指数(PMI)速報値が予想を上回ったことで159.84円まで上昇した。ユーロドルは、欧州市場で欧州の政治情勢や景気の不透明感などから1.0671ドルまで売られた後、1.06ドル台後半でのもみ合いに終始。ユーロ円はドル円の上昇につれた円売り・ユーロ買いが優勢になり170.91円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日銀金融政策決定会合(6月13-14日分)の「主な意見」を見極めながら、160円を巡り本邦通貨当局がドル売り・円買い介入に踏み切るのか否かに注目する展開となる。

 ドル円は、4月29日に高値160.17円を付けた後に本邦通貨当局が第一弾の円買い介入に踏み切った159円台に乗せており、円買い介入の警戒ゾーンで推移している。
 5月4日、イエレン米財務長官は、3日終了週の円相場の動きは急激だったと認めた後、「こうした介入は稀であるべきで、協議が行われることが期待される」と釘を刺していた。
 日本の政府高官筋によると、4月17日に開催された日米韓財務相会談の時、イエレン米財務長官は、自国通貨の急激な下落を巡る日本と韓国両財務相の懸念に留意する姿勢を示し、日本に対しては160円をレッドラインとして、ドル売り・円買い介入を容認していたとのことである。
 本日、ドル円が160円に向けて続伸した場合、この噂の真相が判明することになる。

 米財務省が6月20日に発表した半期に一度の「外国為替報告書」では、日本が為替の慣行に関する「監視リスト(Monitoring List)」に入れられた。理由としては、2023年の日本の対米貿易黒字が624億ドルと高水準だったことと、経常黒字の国内総生産(GDP)比率が3.5%だったことが挙げられている。
 米国議会への提出が義務づけられている為替報告書は、競争上の優位性を得るために自国通貨レートを人為的に押し下げている、すなわち、自国通貨安に誘導していると見なされる貿易相手国に圧力をかけることが目的である。

 判断基準は、1)財の対米貿易黒字:150億ドル以上、2)経常黒字額:対国内総生産(GDP)比3%以上、3)過去12カ月の外貨購入(介入):対GDP比2%以上、となっており、日本は、1)の624億ドルと2)の3.5%が抵触している。
 3)の為替介入は、対米貿易黒字拡大の要因となるドル買い・当該国通貨売り介入であり、本邦通貨当局による2022年と2024年のドル売り・円買い介入はあたらない。
 すなわち、日本が対米貿易黒字を減らして「監視リスト」から外されるためには、ドル売り・円買い介入によってドル安・円高に誘導しなければならないことになる。

 イエレン米財務長官は、昨年6月の為替報告書に添付された文書で、「米国の貿易相手国が昨年に行った為替介入の多くは、ドル売りという形だった。これはこうした国の通貨高に作用した。しかし、財務省は各国の通貨慣行や政策設定、および力強く持続可能かつバランスのとれた世界的成長との整合性への警戒を続ける」と表明していた。

 日銀金融政策決定会合(6月13-14日分)では、長期国債買い入れを減額する方針が決定され、今後1-2年程度の具体的な計画を7月の次回会合で決定することにした。「主な意見」では、7月会合に先送りされた国債買い入れ額の「相応」な減額計画に関する見解や「7月利上げの可能性は場合によっては十分あり得る」(植田日銀総裁)の可能性を見極めることになる。

 植田日銀総裁は、14日の記者会見では、足元で月5兆7000億円の買い入れに関し「減額する以上は「相応」の規模になる」と述べた。さらに総裁は18日の参議院財政金融委員会に出席して半期報告を行い、「相応の、という言葉はコンテクストによって意味を持ち得る。その規模はこれから金融市場局が債券市場参加者会合を開いて市場参加者の意見を確認し、1カ月間の検討の結果決まってくることだ」と説明した。
 7月9-10日に、国債買い入れの運営について意見を聴取する「債券市場参加者会合」が開催され、7月30-31日の日銀金融政策決定会合で減額計画、そして利上げ幅が決定されることになる。

(山下)
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