週間為替展望(豪ドル/ZAR)-豪ドル、利上げ継続で堅調か

◆豪ドル、RBAの予想外の利上げで対円では底堅いか
◆豪・利上げの負の側面の表面化には要注意、指標では雇用統計に注目
◆ZARの上値は重いか、弱いファンダメンタルズと制裁リスクによる資金流出傾向変わらず

予想レンジ
豪ドル円 92.00-96.00円
南ア・ランド円 7.00-7.50円

6月12日週の展望
 豪ドルは対円では底堅いが、対ドルは振幅が激しいだろう。今週、豪準備銀行(RBA)理事会では、据え置きとの予想に反し政策金利を4.10%へ引き上げた。豪日の金融政策スタンスの違いで、対円は堅調地合いが予想される。対ドルでは米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれることで、その結果やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見などで激しく上下することになりそうだ。

 RBAは4月に政策金利を一時据え置いたが、5・6月に連続で政策金利を引き上げた。豪州の月次の消費者物価指数(CPI)の発表が開始されたのは昨年10月からだが、昨年12月の+8.4%をピークに今年3月には+6.3%までCPIは低下した。しかし、4月には再び+6.8%まで上昇するなど、インフレ圧力が後退していない。このまま、インフレ高進となれば、RBAの声明文でも示されたように、金融政策の更なる引き締めを行う可能性が高く、豪ドルの支えとなりそうだ。

 もっとも、警戒しなくてはならないのは高金利の負の側面。先月末に発表された4月の豪住宅建設許可件数は11年ぶりの低水準を記録した。兼ねてから豪議会はRBAの利上げによる経済の悪影響を指摘しており、利上げに対して政治的な圧力が増す可能性には要注意。また、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が、景気判断の分岐点とされる50を4カ月ぶりに下回るなど、中国経済の足踏みが続くような場合も豪ドルの重しになる。

 来週の経済指標では、15日発表予定の5月雇用統計に注目。2-3月は3.5%に抑えられていた失業率が4月は3.7%まで上昇、新規雇用者数も減少、また常勤雇用者もマイナスに転じるなど非常に弱い指標結果だった。RBAは雇用情勢の悪化をある程度は織り込んでいるようだが、予想よりも指標が弱い場合には利上げ継続も難しくなるか。

 南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が重いか。国際通貨基金(IMF)の年次協議では、南アについて経済的および社会的困難が増大していると警告する報告書を発表し、「成長の鈍化、企業や消費者の信頼感の低下、政治リスクの高まりが政府財政に影響を与えている」とも示した。ファンダメンタルズが悪化する中で、プーチン露大統領に外交特権を与えようとしていることで、いつ南アが米国や諸外国から制裁を受けるかが分からない。リスク回避で5月は南ア債が大幅に売られたように、資金流出傾向は続き、ZARは引き続き重いだろう。経済指標では、14日の4月小売売上高に注目。小売売上高はこれまでは市場の反応は鈍かったが、3月の弱い結果には、ZARがこれまで以上に売りで反応した。

6月5日週の回顧
 豪ドルは堅調な動きとなった。RBAが利上げを行ったことが支えとなり、対円では93円半ばまで上昇し年初来高値を更新した。対ドルでも0.67ドル台を回復し小高く推移した。
 ZARは6月1日に対ドルで過去最安値を更新した以降は、調整の買い戻しが優勢となっている。対ドルでは5月中旬以来となる19ランドを割り込んだ。(了)

(小針)
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