東京為替見通し=ドル円、昨年9月22日の再現に要警戒か 本日は日銀会合

 15日のニューヨーク外国為替市場でドル円は米10年債利回り3.70%台まで低下を受けて一時140.16円付近まで下押しした。ユーロドルは欧州中央銀行(ECB)理事会で政策金利が0.25%引き上げられ、ラガルドECB総裁が7月の追加利上げを示唆したことで1.0953ドルまで上昇した。ユーロ円も153.69円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米連邦準備理事会(FRB)による年内2回の利上げ示唆と日銀の大規模金融緩和の維持見通しという日米金融政策の乖離から底堅い展開が予想される。しかしながら、昨年9月22日の再現の可能性には警戒しておきたい。

 2022年9月22日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の後に開催された日銀金融政策決定会合で大規模金融緩和の維持が決定された。ドル円は145.90円まで上昇し、ボリンジャー・バンド+2σの146.12円に迫っていた時、本邦通貨当局がボラティリティー「過度な変動」抑制のためにドル売り・円買い介入を断行した。本日のドル円のボリンジャー・バンド+2σは140.87円付近に位置しており、昨日、松野官房長官が「為替市場の動向をしっかりと注視。必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」と述べていることで警戒しておきたい。

 昨日発表された日本の5月貿易赤字は1兆3725億円となり、1-5月の合計赤字幅は6兆9899億円で、過去最高を記録した2022年同時期の6兆5968億円の赤字を上回り、実需の円売り圧力の強さが確認されたことも、ドル円の下値を支える要因となっている。

 ドル円のテクニカル分析では、140.93円と138.45円を底辺とする「三角保ち合い」を上抜けており、7月FOMCでの利上げ観測や日銀会合での大規模金融緩和策の継続観測を背景にした上昇トレンドの再開を示唆している。
 ドル円の上値の目処は以下の通り。
・142.51円:151.95円から127.23円までの下落幅の61.8%戻し
・142.48円;昨年11月11日の高値
・142.21円:三角保ち合い(底辺2.48円幅:140.93円~138.45円)

 FOMCの政策金利見通し(ドット・チャート)では、2023年末の予想中央値が5.6%(※FF金利5.50-75%)へ引き上げられたことで、年内残り4回のFOMC会合の内、2回で0.25%の利上げが示された。昨日のドル円は、米10年債利回りが3.84%台へ上昇したことで、一時141.50円まで上昇したものの、米10年債利回りの3.7%台への低下で140円台前半まで反落した。

 CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、7月FOMCで5.25-50%へ利上げ、そして、9月、11月、12月FOMCでは据え置き確率が高まっており、年内1回の利上げだけを示唆している。

 すなわち、パウエルFRB議長が「過去2年、FOMCのインフレ予測は外れていた」と述べていたように、市場は年内2回の利上げを信じておらず、米CPIやPPIの下振れにより1回の利上げに留まると見越している。FRBは、2021年までは「インフレ高進は一時的」との見立てから金融緩和策を続けるというミスを犯し、2022年から2023年にかけて10回の利上げによりインフレを抑制しつつあるものの、信用収縮を見過ごすというミスを犯しつつあることを市場は見透かしているのかもしれない。

 5月の消費者物価指数(CPI)が前年比+4.0%まで低下していた米国の金利体系は、FF金利が5.00-25%、2年債利回りが4.6%台、10年債利回りが3.7%台となっており、リセッション(景気後退)による利下げを示唆しており、ドット・チャートが示している2024年利下げ見通しと整合的となっている。


(山下)
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