東京為替見通し=ドル円、米国債格下げによる下値を確認する展開か

 1日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが4.0552%前後まで上昇したことで143.55円まで続伸した。ユーロドルは1.0952ドルまで下落した。ユーロ円は日欧の金利差に着目した円売り・ユーロ買いで157.49円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米国債格下げによる下値を確認しつつ、10時10分の指し値オペや10時30分からの内田日銀副総裁の発言に注目する展開となる。

 格付け会社フィッチ・レーティングスが、米国の格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げたことで、ドル円は143円台前半から142円台後半へ反落している。
 ドル円は、「8月の円高アノマリー」が確認されているが、2011年8月も米国債格下げによる円高の月となった。2011年8月5日に、米格付け機関スタンダード&プアーズが、アメリカの長期発行体格付けを「AAAから「AA+」に格下げしたが、当時、米国議会が、米国債務上限の引き上げを巡る問題で紛糾しており、デフォルト(債務不履行)のリスクが警戒されていた。ドル円は、80円前後から10月31日の変動相場制移行後の最安値75.32円まで下落した。

 現状の米国経済は、NYダウの上昇基調が示唆しているように、失業率が3.6%付近、インフレ率が3.0%付近、そして成長率が2.0%台というゴルディロックス(Goldilocks)に向かいつつあり、エコノミストたちは、「無原罪のディスインフレ」と命名している。
 長短金利逆転(逆イールド)は、米国経済のリセッション(景気後退)入りを示唆しているものの、デフォルト(債務不履行)への警戒感はないことで、影響は限定的だと思われる。

 内田日銀副総裁は、7月7日のインタビューで、金融政策ではない長期金利の操作である「イールドカーブコントロール(YCC)」の運用柔軟化の可能性を示唆していた。新聞報道によると、7月上旬に日本銀行は金融機関の債券デスクに対して、YCC運用柔軟化による債券市場への影響をヒヤリングしていたとのことで、10時30分から予定されている内田日銀副総裁の発言に要注目となる。

 ドル円は、楽観的な米国経済の見通しを背景に、4日に発表される米7月雇用統計に向けて、6月30日の高値145.07円を目指す上昇トレンドを形成している。
 しかしながら、144円台には、昨年10月21日の高値151.95円から今年6月の高値145.07円を経由する中期抵抗線が控えており、目先の抵抗帯(※本日は144.15円)となっている。
 さらに、145円台では、本邦通貨当局がボラティリティー抑制という名目でドル売り・円買い介入を行う可能性があり、植田日銀総裁もYCCの運用柔軟化の理由の一つに「為替市場のボラティリティー抑制」を挙げていたことで、「8月の円高アノマリー」を念頭に警戒しておきたい。


(山下)
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