東京為替見通し=ドル円、本邦通貨当局の円買い介入に要警戒か

 11日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、7月米卸売物価指数(PPI)が予想を上回り、米10年債利回りが4.17%台まで上昇したことで、144.42円から145.00円まで上昇した。8月消費者態度指数の期待インフレ率が低下でドル下押しも、144円半ばまでにとどまった。ユーロドルは1.1005ドルから1.0943ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、投機筋のドル買いと本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に注目することになる。なお一部市場参加者によれば、お盆休みで本邦輸出企業は145円台から上にドル売りオーダー、輸入企業は143円台から下にドル買いオーダーを置きっぱなしにしているもよう。

 本邦通貨当局は昨年9月22日、ドル円が145円台に乗せた局面でボラティリティー抑制を名目にしたドル売り・円買い介入を断行。本日も、145円付近で推移しているため要警戒となる。

 投機筋のポジションの目安となるIMM通貨先物の非商業(投機)部門のネット円売り持ちポジションは、8月8日時点で83,180枚と発表された。その後11日に145.00円まで上昇したことで、10万枚程度まで拡大していることが想定される。

 昨年の本邦通貨当局のドル売り・円買い介入が実施された時間帯は、9月22日の第1弾の円買い介入(2兆8382億円)は東京勢が帰宅しつつある17時台、10月21日の第2弾介入(5兆6202億円)はロンドン午後にあたる日本時間23時台だった。10月24日の第3弾の円買い介入(7296億円)は東京勢が本格参入しつつある8時台という、市場がやや薄い間隙に断行された。当時のIMM通貨先物の円売り持ちポジションは10万枚台だった。そして、ボラティリティーの目安であるボリンジャー・バンド+2σ付近で断行されたが、本日の+2σは、145.40円付近にある。

 ユーロ円が2008年秋以来の160円台に迫りつつあるため、ユーロ売り・円買い介入の可能性にも警戒しておきたい。本邦通貨当局は、2000年秋のユーロ危機の時、日米欧の協調ユーロ買い介入に参加して、ユーロ円の100円割れを買い支えており、外国為替資金特別会計(外為特会)には、当時購入したユーロが残っている。

 明日8月15日の前後には、米国債償還・利払いの円転が見込まれている。日銀によるイールドカーブコントロール(YCC)の運用柔軟化を受けた本邦機関投資家のレパトリエーション(国外滞留資金の本国環流)も念頭に入れておきたい。



(山下)
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