東京為替見通し=口先介入効果も限定的、相場の勢いは弱いが円安地合い継続か

 海外市場でドル円はほぼ横ばい。米10年債利回りが4.25%台まで上昇すると円売り・ドル買いが先行し、一時151.54円まで値を上げた。ただ、政府・日銀による為替介入への警戒感が根強い中、一本調子で上昇する展開にはならなかった。ユーロドルは、ポジション調整目的のユーロ買い・ドル売りが優勢となった。2月米新築住宅販売件数が予想を下回ったことが伝わると全般ドル売りが加速し、23時30分前に一時1.0842ドルと日通し高値を付けた。

 本日のドル円も堅調地合いが継続すると予想する。
 昨日は神田財務官が登庁時の会見で、「(為替)緊張感をもって注視してきた」「(現行の為替動向)違和感を持っている」「大きな変動がみられ、ファンダメンタルズに沿っていない」「日米金利差は明らかに縮小し、今後も縮小が期待される」などと述べた。円安をけん制する発言が伝わると、実際に為替介入が行われることへの警戒感から一時円が買い戻される場面があった。一部の海外メディアなどは、財務官による「強固な(robust)な発言」と表現していた。しかしながら、市場はメディアほど強固なメッセージとは受け取らず、円の買い戻しも限られ、151円すら割り込むことが出来なかった。

 円買いに繋がるような日米金利差が縮小するには、米国の金利低下頼みでしかない。日本のインフレが高進した場合でも、賃金上昇を伴う景気拡大というような状況ではないからだ。日経新聞とテレビ東京が行った今月22日から24日の調査でも、77%が「物価上昇を上回る賃上げ」が実現するとは思わない、と回答している。2月の80%からほぼ横ばいで推移していることは、春闘の引き上げと国民全体との間では、かい離があると言えよう。

 実質賃金が昨年12月時点で21カ月連続のマイナスとなっていることや、昨年7-9月の家計可処分所得も4半期連続で減少していることを考えると、国民全体の意識が変わることを期待するのが難しい。(なお、10-12月期の可処分所得は4月中旬に公表予定)このような状況下で、本邦金利が上昇し、円を積極的に買うのは難しく、むしろ財務官が昨年末に述べていた「一般論として日本に魅力がなければ(円は)下がるに決まっている」との状況は続きそうだ。

 本日のアジア時間で市場を動意づけるものは乏しい。経済指標では本邦のPPI指数の2月企業向けサービス価格指数が発表される。昨夏から2%台を回復し、2月予想も2%台を維持するとの予想。よほど大きく市場予想からかい離がない限りは、ドル円の動意は繋がらないだろう。

 なお、イスラエルのガザ南部・ラファ市への地上攻撃が懸念されていることもあり、原油先物価格が再び底堅い動きになるなど、市場は中東情勢の更なる混迷の高まりをリスク要因として組み込み始めている。中東情勢が、再び市場を大きく動かすことになりかねないので注意深く見ていきたい。


(松井)
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