NY為替見通し=160円台もいずれ慣れてくるか、円安トレンドは変えられず

 本日のNY市場でのドル円も、引き続き円安基調は変わらないだろう。東京市場では昨日に付けた約37年半ぶりの高値を超えることが出来なかったが、下押しも限られた。これまでも「シーリング」と呼ばれる水準は市場が囃し立てているだけで、一定水準をターゲットにして為替介入などは行わず、徐々に水準に慣れてくることが多い。よって、いずれ160円という水準にも、目が慣れてくることが予想される。

 1986年以来という水準ということもあり、本日も本邦通貨当局者は「高い緊張感を持って必要な対応をとっていく」などと円安に懸念を表明している。しかし、7月の利上げの可能性を示唆したにもかかわらず円安が止まらないことで、実弾介入以外に円売りに歯止めをかける手段がなく、手詰まり状態なことを市場は理解している。また、実弾介入も一時的な円安抑制でしかない。もし、本邦通貨当局者が円安の流れを急転させたいのであれば、円売りを促している新NISA(少額投資非課税制度)の海外投資分の除外や、かつて噂されたレパトリ減税策なども提示するべきとの声がある。そのような策を講じないことで、市場参加者の中では本邦通貨当局者および政府が、円安を本腰を入れて止めようとしていないのではないかとの憶測も徐々に出てきている。

 また、円安が継続されるのは、明日予定されている米大統領選候補者討論会を控え、バイデン政権がインフレ圧力の緩和に苦労している中で、インフレ高進につながるドル売り介入を本邦通貨当局が行うのは政治的リスクが大きいことも要因。また、イエレン米財務長官が「為替介入はめったに使用されない手段であるべき」と言及する中で、「G7の国の通貨は市場で決定されるべき」という原則を無視して、介入を指示することが難しく、ドル円を底堅くさせると思われる。

 本日は米国から1-3月期の国内総生産(GDP)確報値、5月耐久財受注、前週分の失業保険申請件数ほか、複数の経済指標が発表される。市場予想よりも結果が大きく乖離を生じた場合は、市場が動意づくこともあるだろうが、明日は市場が最も注目している経済指標の一つ、5月の個人消費支出(PCE)デフレーターが発表されることで、経済指標で大きくトレンドを作るほど動くことは難しそうだ。


・想定レンジ上限
 ドル円は、昨日高値160.87円から節目の161.00円が抵抗帯。その上は1986年12月25日高値161.45円。

・想定レンジ下限
 ドル円は、昨日160円を超えた後の戻り安値159.89円近辺。その下は25日安値159.19円。


(松井)
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