東京為替見通し=ドル円、年初来の下落幅の半値戻し154.90円が攻防の分岐点か

 12日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、1月米消費者物価指数(CPI)が総合・コア指数ともに予想を上回ったことで、米長期金利の上昇とともに、154.80円まで上昇した。ユーロドルはウクライナ停戦合意への期待感から、1.0317ドルから1.0430ドルまで上昇した。ユーロ円も160.97円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、トランプ関税やウクライナ停戦合意期待による買い戻しの射程を見極める展開が予想される。

 昨日のドル円は154.80円まで上昇しており、年初来の高値158.87円(1/10)から安値150.93円(2/7)までの下落幅の半値戻しである日足一目均衡表・基準線154.90円に迫っている。今後は、「半値戻しは全値戻し」という相場格言を念頭に155円台を回復するのか否かを見極めていくことになる。

 8時50分に発表される1月企業物価指数(予想:前月比+0.3%/前年比+4.0%)では、輸入物価指数を確認しておきたい。昨年9月には前年比-2.6%だったが、12月の段階では同比+1.0%まで上昇しており、かつて植田日銀総裁が懸念を表明していた円安による輸入物価指数の高止まりという状況ではないものの、円相場水準に対応した現在位置の確認をしておきたい。

 昨日発表された米1月消費者物価指数(CPI)の前月比+0.5%が2023年8月以来の大幅な伸び率だったことで、米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げ時期がさらに後退している。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、追加利下げ(-0.25%=4.00-25%)の時期は10月FOMCまで先送りされており、12月末時点でのターミナルレート(利下げの最終到達点)はこの水準に留まっている。

 一方で、日銀の追加利上げのターミナルレートは、先日のタカ派の田村日銀審議委員によると中立金利水準の1.0%程度となっており、年末時点の日米政策金利の格差は、3%程度となっている。

 トランプ米大統領は、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「金利は引き下げられるべきだ。それは今後の関税と歩調を合わせることになる」と利下げを要求した。しかし、パウエルFRB議長は、一切コメントしないと回答し、「政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」というこれまでの見解を繰り返している。

 トランプ米大統領のトランプ関税がインフレ期待を押し上げており、ドル高が輸入物価を抑制する構図となっているため、第1次トランプ米政権でのドル安・金利低下の目論見からは乖離しつつある。

 また、昨日は、トランプ米大統領がプーチン露大統領と電話会談し、ウクライナでの戦争を終結させるための協議を開始することで合意した、と報じられた。
 欧州の地政学リスクの緩和に繋がることで、今後の関連ヘッドラインには注目しておきたい。


(山下)
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