東京為替見通し=ドル円は方向感出ず、今週はリラ・ランドが大相場の可能性高い
海外市場では米ミシガン大学が発表した5月消費者態度指数(速報値)で消費者の期待インフレ率が予想を上回ったことが分かると、米金利の上昇とともに全般ドル買いが活発化。ドル円は一時135.76円まで上値を伸ばした。ユーロドルは1.0848ドルと4月10日以来約1カ月ぶりの安値を更新した。
今週のドル円は135円を挟んで上下1‐2円の間で方向感のない動きになりそうだ。先週発表された米国の4月の消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)は相次いで市場予想より弱い結果となったが、ミシガン大学の期待インフレ率が上振れたことでドルは上昇に転じた。ドル円は、週初の134.80円台から週引けは135.70円近辺となり、反発して引けている。また、米10年債利回りは、週初の3.44%台から3.46%台へ小幅に上昇して引け「行って来い」の相場になった。市場全体が、今後の米経済の動向に不透明感を持っていることで、トレンドが当面は出来にくい相場展開になり、今週は方向感がなく動く可能性が高そうだ。
不安定な相場をかき乱す要因としては、米国の債務問題がある。しかしながら、「Xデイ」とされている6月を乗りきり、週末に議会予算局(CBO)は、財務省が6月に十分な歳入を確保できれば、米国は7月までデフォルトを回避できると最新の報告書で発表した。CBOは「債務上限が変更されない場合、6月最初の2週間のどこかの時点で政府がすべての債務を返済できなくなる重大なリスクがある」とも指摘しているが、一定の歳入を確保できた場合は、デフォルトリスクとされる「Xデイ」は7月末までずれ込み、債務問題は更に長期戦になる可能性もありそうだ。なお、バイデン米大統領と共和党のマッカーシー下院議長ら議会指導部とは、16日に再協議されると報道されている。
主要通貨に対しては、方向感が出にくいだろうが、本日を含め新興国通貨の値動きは激しくなることが予想される。特にトルコリラと南ア・ランドの動きには要警戒となる。
3月に起こった金融システム不安の高まりにより、投資家の信用収縮の影響で、新興国からの資金流出が顕著になっている。その影響で新興国通貨のリラとランドは軟調地合いとなっていたが、信用収縮による売り要因だけでなく、国内リスクの高まりが更に相場に大きな変動を与えている。
トルコリラは14日に行われた大統領・国民議会選挙の結果次第の動きで乱高下が予想されている。国営通信の最新統計は、エルドアン大統領が選挙に完全勝利するために必要な50%の基準を下回っていることを示したが、野党統一候補のクルチダルオール氏も同様に、過半数に届いていないもよう。両者ともに過半数に届かない場合は、28日の決選投票に選挙が持ち越される可能性が高い。どのような結果になった場合でも非常にボラタイルな動きを見せることは確実で、リラは売り買いどちらにも大きく振れそうだ。
南アに関しては、先週ブリゲティ駐南ア米国大使が「南アがロシアに武器と弾薬を提供している」「武器と弾薬は昨年12月にケープタウンのサイモンズタウン海軍基地に停泊したロシアの船に積み込まれた」と述べたことで、先週12日には対ドルで史上最安値までランド売りが進んだ。週明けのランド相場は、週末にブリゲティ氏が先週の発言について、謝罪をしたことで、ランドは買い戻しが入っているが予断を許さない状況は変わらない。特に懸念されているのが、これまで米国が南アをはじめとした多くのアフリカ諸国に適用していたアフリカ成長機会法(AGOA)に対して、南アが除外される可能性が高まっていることだ。更に、この後広島で開かれるサミットで、米国だけでなく他国も南アに対する制裁に同意する可能性もあり、そのような措置が取られることになった場合は、南ア経済にはこれまでに無いほどの痛手となる。
(松井)
今週のドル円は135円を挟んで上下1‐2円の間で方向感のない動きになりそうだ。先週発表された米国の4月の消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)は相次いで市場予想より弱い結果となったが、ミシガン大学の期待インフレ率が上振れたことでドルは上昇に転じた。ドル円は、週初の134.80円台から週引けは135.70円近辺となり、反発して引けている。また、米10年債利回りは、週初の3.44%台から3.46%台へ小幅に上昇して引け「行って来い」の相場になった。市場全体が、今後の米経済の動向に不透明感を持っていることで、トレンドが当面は出来にくい相場展開になり、今週は方向感がなく動く可能性が高そうだ。
不安定な相場をかき乱す要因としては、米国の債務問題がある。しかしながら、「Xデイ」とされている6月を乗りきり、週末に議会予算局(CBO)は、財務省が6月に十分な歳入を確保できれば、米国は7月までデフォルトを回避できると最新の報告書で発表した。CBOは「債務上限が変更されない場合、6月最初の2週間のどこかの時点で政府がすべての債務を返済できなくなる重大なリスクがある」とも指摘しているが、一定の歳入を確保できた場合は、デフォルトリスクとされる「Xデイ」は7月末までずれ込み、債務問題は更に長期戦になる可能性もありそうだ。なお、バイデン米大統領と共和党のマッカーシー下院議長ら議会指導部とは、16日に再協議されると報道されている。
主要通貨に対しては、方向感が出にくいだろうが、本日を含め新興国通貨の値動きは激しくなることが予想される。特にトルコリラと南ア・ランドの動きには要警戒となる。
3月に起こった金融システム不安の高まりにより、投資家の信用収縮の影響で、新興国からの資金流出が顕著になっている。その影響で新興国通貨のリラとランドは軟調地合いとなっていたが、信用収縮による売り要因だけでなく、国内リスクの高まりが更に相場に大きな変動を与えている。
トルコリラは14日に行われた大統領・国民議会選挙の結果次第の動きで乱高下が予想されている。国営通信の最新統計は、エルドアン大統領が選挙に完全勝利するために必要な50%の基準を下回っていることを示したが、野党統一候補のクルチダルオール氏も同様に、過半数に届いていないもよう。両者ともに過半数に届かない場合は、28日の決選投票に選挙が持ち越される可能性が高い。どのような結果になった場合でも非常にボラタイルな動きを見せることは確実で、リラは売り買いどちらにも大きく振れそうだ。
南アに関しては、先週ブリゲティ駐南ア米国大使が「南アがロシアに武器と弾薬を提供している」「武器と弾薬は昨年12月にケープタウンのサイモンズタウン海軍基地に停泊したロシアの船に積み込まれた」と述べたことで、先週12日には対ドルで史上最安値までランド売りが進んだ。週明けのランド相場は、週末にブリゲティ氏が先週の発言について、謝罪をしたことで、ランドは買い戻しが入っているが予断を許さない状況は変わらない。特に懸念されているのが、これまで米国が南アをはじめとした多くのアフリカ諸国に適用していたアフリカ成長機会法(AGOA)に対して、南アが除外される可能性が高まっていることだ。更に、この後広島で開かれるサミットで、米国だけでなく他国も南アに対する制裁に同意する可能性もあり、そのような措置が取られることになった場合は、南ア経済にはこれまでに無いほどの痛手となる。
(松井)