NY為替見通し=イベント少ない中で神経質な動き、過度の介入警戒は必要ないか

 本日のドル円は、欧州時間に入ると一時158.82円まで急落する場面があった。ここ最近は7日続伸となっていたこともあり、159円半ばを割り込むと下げ足を速めた。市場では160円という節目に近づいたこともあり、介入警戒感も多少あったことも下げ幅を広げた要因になった。

 しかし、実弾介入が出ない限りは、今回のような多少は調整が入るものの、円安が進行しやすい状況には変わりはない。ドル円は辛うじて4月29日の高値を超えていないが、本日もポンド円は2008年以来、豪ドル円は2007年以来、NZドル円は1986年以来の水準まで上昇するなど、円安の流れが続いている。

 市場では4月29日に介入が入った水準が160円台(160.17円)だったことで、再びドル売り介入が入るという警戒感もある。しかしながら、一定の水準で介入が常に行われるわけではないことで、過度に介入を警戒する必要は無いとも思われる。これまでも「榊原シーリング」「黒田シーリング」など、当時の財務官や日銀総裁などの名前を付けて、ある一定の水準が重しになると市場が意識してきたこともある。しかし、実際はこのシーリングは何の根拠もなかった。現財務官の神田氏についても、2022年9月に為替介入が行われると、その介入水準だった145-146円を「神田シーリング」と呼ぶ一部市場参加者がいたが、結局はあっさりと上抜けている。そして、現時点では160円台が「神田シーリング」と呼ばれ、この2営業日上抜けすることが出来なかった。しかし、これは25日、26日カットで160.00円に大きめのオプションが設定されていることが上抜けを阻止しているというのが要因と思われる。これまでも鈴木財務相、神田財務官などは「為替の具体的な水準についてはコメントしない」と発言しているだけではなく、「特定の水準を念頭に判断していない」とも述べていることで、シーリングを過度に気にする必要はないだろう。

 また、4月29日の介入時は、前営業日が154円台まで下がった後の160円乗せという5円超の円安だったことで、これはイエレン米財務長官が言う「為替介入は過剰な動きへの対処であるべき」ということに当てはまるだろう。しかし、現行水準から160・161円に乗せた場合を「過剰な動き」とするには無理があるのではないだろうか。

 円安地合いが継続されそうだが、本日は米国から主だった経済指標の発表がないことで、市場が大きく動意づくのは難しそうだ。デイリー米サンフランシスコ連銀の講演などがNY午後に予定されているが、今週は米国から28日に5月の個人消費支出(PCE)デフレーターの発表を控えていることもあり、この結果を見るまでは米連邦準備理事会(FRB)当局者の発言内容では動きにくい。また、明日には本邦の5月全国消費者物価指数(CPI)から算出される、刈込平均値、加重中央値、最頻値などが公表される。4月は刈込平均値が2022年7月以来の1.8%、加重中央値は2023年3月以来の1.1%、最頻値は2023年1月以来となる1.6%まで低下したこともあり、この結果を見定めるまでも一方的にポジションを傾けくいことも値動きを狭めるか。


・想定レンジ上限
 ドル円は、4月29日高値160.17円。その上は節目の161.00円。

・想定レンジ下限
 ドル円は、6月21日安値158.67円。


(松井)
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