株式明日の戦略-不意打ちの金融政策修正、年末相場は一気に荒れ模様

 20日の日経平均は大幅に4日続落。終値は669円安の26568円。米国株安を受けても小高く始まると、前場ではリバウンド狙いの買いが入り、じわじわと上げ幅を広げていった。しかし、昼休みに日銀が長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.5%程度まで拡大することを決定したと伝わると、先物が急落して為替市場では円高が急速に進行。後場は地合いが一変して、スタートから400円近い下落となった。日本の金利上昇が意識されて金融株以外はほぼ総売りの様相が強まる中、下げ幅を800円超に広げて26500円を割り込む場面もあった。引けにかけてはやや戻したものの、600円を超える下落で取引を終了。金利上昇に敏感なところの下げがきつく、マザーズ指数が4.7%安。REIT指数が5.3%安となり、終値ベースでの年初来安値を更新した。

 東証プライムの売買代金は概算で4兆0700億円。業種別では銀行、保険、電気・ガスなどが上昇した一方、不動産、精密機器、輸送用機器などが下落した。日銀の政策修正を受けて、三菱UFJ<8306.T>やみずほFG<8411.T>など銀行株が後場急伸。半面、金利上昇への警戒から三井不動産<8801.T>や三菱地所<8802.T>など不動産株、急激な円高進行を受けて三菱自動車<7211.T>やマツダ<7261.T>など自動車株が、後場に入って大きく値を崩した。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり205/値下がり1612。金融株が全般的に強く、メガバンクのほか、第一生命、かんぽ生命、T&Dなど保険株が急伸。コンコルディアや九州FGなど地銀株も軒並み高となった。大阪地裁が美浜原発の運転を認める判決を出したと伝わり、関西電力のほか東電HDや中部電力が上昇。防衛予算に関するメディア報道を材料に、細谷火工や豊和工業など小型の防衛関連が物色された。なお、東証に上場している日本銀行の出資証券<8301.T>は4%超上昇した。

 一方、グロース株が強く売られており、レーザーテック、東京エレクトロン、ソフトバンクG、ソニーGなどが大幅安。キーエンス、日本電産、ロームなどハイテク関連も軒並み安となった。金融緩和環境で業績を伸ばせるタイプの企業が叩き売られており、SBIリーシング、SREHD、ロードスターなどが急落。霞ヶ関キャピタルはストップ安まで売り込まれた。直近IPO銘柄が手じまい売りに押されており、トリドリ、フーディソン、サイフューズなどが2桁の下落率。不眠障害治療用アプリケーションの医療機器製造販売承認が了承されたことを発表したサスメドは、材料出尽くしとの見方が強まりストップ安となった。

 本日は2社が新規上場。monoAI technologyは高い初値をつけ、終値も初値を上回った。INFORICHは買い殺到で値が付いておらず、きょうの上場銘柄には日本株変調のネガティブな影響は限定的となった。

 日経平均は前場では米国株安を受けても上昇するなど底堅く推移したが、日銀会合がネガティブサプライズとなり、後場に急落した。日本だけ大規模緩和を続けていたのは世界の流れからすれば異質であったわけで、政策修正自体はあって然るべき。ただ、それを今回行うことが適切だったのか。きょう引け後の会見で示唆して地ならしを行い、次回の会合で修正を行えば、ここまで相場は荒れなかったはず。直近では政府が日銀との共同声明を見直すとの観測が出てきており、このことが何らかの影響を及ぼしたのかもしれないが、唐突感は強い。

 今回はあくまで変動幅の拡大を許容したという話で、FRBやECBのように利上げを積極的に行う方向に方針転換したというわけではない。その点では米国株が下げ止まってくれば、きょうの下げはやりすぎたということで鋭角的に切り返す展開も期待できる。方向感なく上げ下げを繰り返すよりも、大きく下げた方が反発力は大きくなるかもしれない。ただ、日本の大規模緩和がいつまでも続くわけではないことが強烈に印象づけられ、年末の市場参加者減少が予想されるタイミングで日本固有のリスクが急浮上してきた。米国株のさえない動きが続いた場合には、日本株からの資金逃避が加速する可能性も高い。今年の残り8営業日は不安定な状態が続くことになるだろう。
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