東京為替見通し=「第1の力」としての2月輸入物価指数に要注目か

 11日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが上昇に転じたことで、欧州市場の安値146.49円から147.15円付近まで反発した。ユーロドルは米長期金利の上昇を受けて一時1.0915ドルまで下落。ユーロ円は欧州時間に一時160.22円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日本2月の輸入物価指数を見極めた後は、今夜発表される米2月消費者物価指数(CPI)を控えて動きづらい展開が予想される。

 すなわち、本日は、日米の物価指数の発表という債券版の「スーパー・チューズデー」となるため、サプライズには警戒しておきたい。

 8時50分に発表される2月の企業物価指数では、「第1の力」としての輸入物価指数に要注目となる。
 輸入物価指数(円ベース)は、2022年7月に前月比+2.8%、前年比+49.2%のピーク(※前年比)を記録して以来、2024年1月は前月比+0.2%、前年比-0.2%まで低下してきている。

 植田日銀総裁は、物価を押し上げる主役が「第1の力」から「第2の力」に徐々にバトンタッチし、賃金と物価の好循環が強まっていく姿をメインシナリオと考えている。
 「第1の力」である輸入物価上昇の価格転嫁が収まり、「第2の力」である賃金が上昇して物価の緩やかな上昇に繋がるメカニズムは、明日13日の春闘の集中回答、15日の春闘の第1次集計結果で可能性が高まることが見込まれている。
 連合は、組合側の要求した賃上げ率の平均が昨年同時期を上回る5.85%だったと発表している。

 今夜発表される米2月消費者物価指数(CPI)は、前月比+0.4%、前年比3.1%と予想されており、1月の前月比+0.3%から伸び率上昇、前年比+3.1%とは伸び率は変わらずと見込まれている。
 1月のCPIはコア指数が前月比+0.4%と想定外の強い数字だったことで、CPIショックが市場を攪乱させた。2月のCPIでは、1月の数字が一時的な攪乱だったのか否かを確認することになる。1月分のCPIでは、住宅関連を除いたサービスのスーパーコアの前月比は+0.85%だった。
 パウエルFRB議長は、先週の上院での議会証言で、インフレ率が目標の2%に向けて低下しているとの「確信が強まるのを待っている」とした上で、その確信が得られた「今からそう遠くない(Not Far)時点で、利下げを開始するのが適切になる」と発言した。
 先週末に発表された米2月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比27.5万人増だったものの、過去2カ月分が16.7万人下方修正された。そして、失業率は3.9%へ上昇し、平均時給は前月比+0.1%、前年比+4.3%と予想や1月の上昇幅を下回っていた。
 
 2月のCPIと雇用統計をあわせて、来週の19-20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、利下げ時期を協議することになる。
 スワップ市場では6月からの利下げ開始がほぼ確実視されており、今後1年間で各0.25%、計4回(1.00%)の政策金利引き下げが見込まれている。

(山下)
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